歯肉の働き
- 歯と歯周組織の基礎知識

血液成分の構成
前提知識として、簡単に、血液の成分について説明しましょう。難しければ飛ばし読みをしても構いません。
血液は、赤血球、白血球、血小板の血球細胞成分と、血漿(けっしょう)と呼ばれる液体成分から成っています。赤血球は全身に酸素を運び、白血球や血漿は生体を感染から守っています。血小板は、出血を止める役割をになっています。白血球は免疫細胞として重要な役割を行います。成人の血液1センチ立法には、約7,000の白血球があり、5つの細胞で構成されています。好中球(こうちゅうきゅう)、好塩基球(こうえんききゅう)、好酸球(こうさんきゅう)、単球、リンパ球です。それぞれの免疫システムを、それぞれの炎症に応じて働いています。これらは、生来の自然治癒力をつかさどり、身体を守っています。
また、歯肉溝滲出液の中には、血漿成分やさまざまな酵素(こうそ:代謝を促進する物質)など、生体防御に重要な成分が含まれています。歯垢(しこう:プラーク)の中の細胞や細菌がつくった毒素などが体内(歯肉内)へ侵入してくると、好中球の数が増え、これらの物質を食べつくし、好中球が持っている分解酵素で殺すことが出来ます。これが自然抵抗力です。

歯肉の機能的重要性
歯肉は大変重要な組織です。歯肉炎になると、歯肉溝の白血球の数が増加します。また、症状が進むにつれて、歯周組織中に見られる細胞が変化し、歯肉溝には、歯周病の細菌に対して反応するリンパ球も多くなります。これが炎症の始まりです。これらの細胞は、生体の防御システムの中で働く兵隊たちです。それらは、細胞として白血球の中に多く存在します。
免疫をつかさどる細胞は、免疫担当の細胞と言われ、歯肉の構成する組織に多く存在します。免疫担当細胞には、細菌を食べる食細胞の単球やマクロファージ、好中球が、リンパ球にはTリンパ球とBリンパ球と呼ばれるもの、また直接細菌をやっつける強力なナチュラルキラー細胞などが存在し、免疫応答の中心になっています。
これらの直接的な免疫細胞のほかにも、歯肉の上皮細胞、毛細血管を構成する血管内皮(けっかんないひ)細胞、歯肉結合組織をつくっている線維芽(せんいが)細胞なども免疫現象に関係し、広い意味での免疫担当細胞ということもできます。これらが刺激や異常に応じてチームを組んで対応しているのです。

歯肉と歯がくっつく働き
前述しましたが、歯肉上皮は、常に新しい細胞に入れ替わって、細胞の攻撃から私たちの身体(生体)を守っています。歯肉上皮のもう一つの重要な働きは、歯とくっつくことです。歯茎の上皮がしっかりと歯に密着していなければ、歯と歯茎のすき間には歯垢(しこう)が入り込み、細菌によって歯茎に炎症が起きることになります。健康な歯茎を保つために、歯茎の内縁上皮は歯と特別な接着をしています。この接着が壊されると、歯肉炎や歯周炎などの歯周病が発生することになります。
歯肉上皮のすぐ下には結合組織があります。この組織は、主にコラーゲン線維、線維芽細胞や血管からできています。ほかに、免疫担当の細胞もあります。歯肉結合組織の中のコラーゲン束は歯肉線維と呼ばれ、歯肉を歯に固定したり、歯肉の形を保つ役目を果たしています。